メディアの現在、そして未来

 2014年11月22日(土)、麻布学園講堂にて、創立120周年記念・連続教養講座の最終回となる第6回目が「メディアの現在、そして未来」と題して催されました。

 ご出席いただいたのは、日本テレビ放送網でテレビ局のさまざまな中枢業務を担当なさり、現在は編成局長である廣瀬健一(ひろせけんいち)氏(1978年卒)、電通にお勤めで、あの「おとうさん」犬をはじめ、さまざまな話題のCMをつくられている、日本を代表するCMプランナーである澤本嘉光氏(さわもとよしみつ)氏(1985年卒)、情報社会論・メディア論を展開される批評家、大学講師で、プロデューサーでもある濱野智史(はまのさとし)氏(1999年卒)、大学院で「あさり」の研究をなさった理系アナで、「好きな男性アナウンサーランキング」で1位を獲得され続ける桝太一(ますたいち)氏(2000年卒)の4人でした。皆さんがそれぞれのメディアでご活躍で、「メディアの現在、そして未来」のお話を伺うのに、実にありがたいメンバーでありました。

 最初に、今回の司会もしていただく廣瀬健一さんから、メディアとしてのテレビの歴史を、ご自身の歩みと重ね合わせて振り返っていただきました。マス4媒体(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)にデジタルメディア、ネットメディアが加わってからは、電話や音楽のありようが、デバイス(機器)の変化のありようとして目を引くとともに、テレビがデジタル社会・ネット社会の影響を受けているのは事実ではあるが、根本は、テレビがいかに新しいコンテンツを創り出していくかにあると語られました。そして、それは、「見たい」という思いを媒介にしてテレビと視聴者がつながっていくことではないかということで、「見たい」をキーワードにした日本テレビのプロモーション映像を見せていただくことでお話を終えられました。

  次に、桝太一さんからは、送り手側であるアナウンサーの立場から感ずる、テレビというメディアにおける変化について、お話しいただきました。「ズームイン 朝」からの、朝の情報番組を振り返られて、2003年あたりから変化があったのではないかと思うということでした。それは、アナウンサーをとりまく状況と立ち位置の変化で、その背景にはやはりインターネットの普及(誰でもが見るニュースサイトの出現、SNSの一般化)があり、それによって視聴者からの評判が送り手に可視化されるとともに、送り手についての情報が速くかつ激しく拡散されることを指摘されました。アナウンサーにとっては、正直なところ厳しい時代ではあるけれど、求められるのは、視聴者に激烈な反応が起きないようにするバランス感覚と、ほどよい反応が起こせる「個性」ではないかということでした。

 つづく濱野智史さんは、これまでのマスメディアとネットメディアとの違いを確認することからお話しいただきました。その違いは、言うまでもなく、ネットメディアがマスメディアの苦手としていたインタラクティブ性(双方向性)を持っていることであるが、双方向性をもった自由な発言を可能にしたネットメディアには身体性が欠けており、言葉が一人歩きをして、差別的発言など、ひどいことでも何でも言えてしまうという事態も生み出していることを指摘されました。そのようなメディア状況において、AKBなどのアイドルのあり方は、身体性を持った双方向性=生身の人間との交流を実現しているのではないかということで、びっくりハプニングを演出されました。舞台に、濱野さんがプロデュースしている「PIP」というアイドルグループが登場して歌い、ノリのいいたくさんの生徒たちが舞台前に集まり、大声を出して盛り上げてくれました。

 その興奮が冷めやらないまま、最後の澤本嘉光さんの順番となり、澤本さんは、ハプニングと生徒のノリのよさ、それが可能が学校であることに、「いい学校だなあ、この学校を出てよかったなあ」とおっしゃて、お話に入りました。講座のタイトルにある「そして未来」について、10年前に現在のメディア状況を想像することはできなかったので、未来について語ることは無理で、その時のメディアの現実に対応するしかないとのことでした。CMの世界について言えば、クライアントの出す課題、メディアの状況の課題に一休さんのようにトンチ(アイデア)で対応するのだということで、ソフトバンクのCM制作を例としてお話しいただきました。そして、メディアに進化(変化)があれば、表現も進化(変化)していくので、マス4媒体にWebが加わったことで、組み合わせが増えることになったし、そもそもメディアということについて言えば、Tシャツでもシールでも、メディアになることができるので、メディアの未来について言えば、メディアをつくることだとも言えるとのことでした。そして、新たなメディア技術と表現との対応例を具体的なCM作品において示していただきました。

 休憩を挟んで、会場の生徒からのさまざまな質問に対してそれぞれの方から答えていただきました。麻布での学園生活がメディアの世界で仕事をすることに役立っていることはありますかという質問には、澤本さんは、真面目に言うと、メディア界には先輩がたくさんいるので、なにかと助かるということ、不真面目に言うと、麻布にいるときに言い訳ばっかりして生活していたようなので、CM界でも言い訳が言えて、麻布生に向いているかもしれないと答えていらっしゃいました。澤野さんは、何をやってもよいというような自由な麻布だったので、自由な発想が求められるメディア界には向いているとおっしゃっていました。桝さんは、アナウンサーとしてはないですねとあっさり答えつつ、仕事の現場では自分を信じて判断するということが必要なので、麻布での生活が自由のなかで自分で考えて決めていくことだったことで、そういうことが培われていてよかったと感謝していると振り返っていらしゃいました。 廣瀬さんは、メディア業界は、毎日定刻に合わせて働くというきちきちとした生活ではないので、やるときはやるというように自分でペースが作れるような麻布生には向いているように思うとおっしゃっていました。その他、答えにくいような質問も含めて、たくさんの質問に丁寧に答えていただき、出席者と現役麻布生との交流の時間となり、最後には、出席者それぞれの方が母校のよさ、ありがたさを語りつつ、それを生かしてほしいと、生徒たちへのあたたかいメッセージをいただきました。 

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