麻布文庫

菅野 正則

諸葛孔明

  この3月(2008年3月)、菅野さんの教え子が卒業する日に間に合うように本書が発行され、卒業生全員に菅野さんより本書が寄贈された。

 本書は土曜日の特別授業(現教養総合)の講座の一つとして、菅野さんが2年にわたって開講した「諸葛孔明の生き様」という講義をもとににして、退職後に現地調査(実感)をした上で、書き下ろされたものある。

 中国人の血となり肉となっている「三国志」の話は、小説『三国志演義』がもとになっており、歴史的な事実とは必ずしも言えない部分が多い。また、一方で吉川英治著を始めとした日本人の親しんでいる『三国志』のこの演義をもとにしており、その意味では日中共通しているとも言える。

 本書は出来るだけ史実に近づくために、演義を排して、正史にもとづく「事実」をもとに、「三国志」の世界、なかでも氏の敬愛する「乱世の中でひたすら誠実に生きた一人の人間の姿(孔明)」を描いたもので、読者は三国志の乱世の姿や、その中で懸命に生きた人々の、それぞれの生き様を実感できるであろう。

 三国志の世界は、正史だけでも十分に私たちを魅了する力を持っているので、演義(小説)の過剰な修飾をはぎとった本書を是非一読して、「人間の生き方」に触れてほしいし、それが菅野さんの密かに望むところでもあろう。

安東 守仁